社長ノート

Kameemon Leader’s Note 2025年3月号

「持続可能な介護のために—金融と介護の共通点」

 介護を取り巻く環境は、変化し続けている。高齢化の進展、介護人材の不足、財政負担の増大——これらの課題にどう向き合うかが、介護業界全体に問われている。ここで重要なのは、「今をどう乗り切るか」ではなく、「長期的に介護を持続可能なものにするにはどうすればよいか」を考える視点だ。

 金融の世界では、短期的なリターンにとらわれず、長期的な視点で資産を成長させる「長期投資」が重視される。同様に、介護においても、単に目の前の負担を軽減するだけでなく、持続可能な仕組みを構築することが求められる。

長期的な視点で介護を考える

 目先の課題を解決するための「効率化」は、確かに重要だ。しかし、過度に効率を追求するあまり、人と人との関わりが希薄になれば、本来の介護の価値が損なわれかねない。

 イギリスでは、「パーソナル・センタード・ケア(Person-Centered Care)」の考え方が浸透している。これは、利用者一人ひとりの価値観や生き方を尊重し、それに合わせた介護を提供するというものだ。短期的には手間がかかるかもしれないが、長期的には利用者の自立を促し、結果的に介護の負担を減らすことにつながる。

 金融の世界で「短期的な利益を求めることが、長期的な損失につながる」と言われるのと同様、介護もまた、「今の負担軽減」だけを考えていては、未来の選択肢を狭めてしまう可能性がある。

持続可能な介護のための仕組み

 金融には、「ポートフォリオ理論」という考え方がある。これは、一つの資産に依存せず、複数の資産を分散させることでリスクを減らし、安定的な成長を目指すものだ。介護においても、一つの形に固執せず、多様な選択肢を用意することが重要になる。

 たとえば、イギリスでは「エクストラケア・ハウジング」という仕組みがある。これは、完全な施設介護でもなく、在宅介護でもない、中間的な形態の介護サービスで、利用者が自立した生活を送りながら、必要なときにケアを受けられる仕組みだ。このような柔軟な選択肢を持つことが、介護を持続可能なものにするための鍵になる。

 また、日本では「家族が介護を担う」ことが一般的だが、それだけでは限界がある。イギリスでは「ソーシャル・プリスクリプション(社会的処方)」の考え方があり、地域の活動やボランティアと連携しながら、高齢者が社会とのつながりを持ち続けられるような仕組みが整えられている。介護を家族だけの責任にするのではなく、地域全体で支える仕組みを強化することが求められている。

2025年、介護の未来を考える

 介護の課題は、今すぐに解決できるものではない。しかし、長期的な視点を持ち、「持続可能な介護とは何か?」を考えることが、未来を切り開く第一歩となる。

 人は、感動と感激が行動を変える。そして、その行動が、介護の未来を創る原動力となる。

 2025年、私たちは「持続可能な介護」に向けて、何ができるのかを考え、実践していく年にしたい。短期的な解決策ではなく、長期的に見て介護がより良い形で発展するために、どのような仕組みを作るべきか。金融の視点から介護を考えることで、新しい可能性が見えてくるはずだ。

株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造