社長ノート
Kameemon Leader’s Note 2025年10月号
「価値を高める『投資』の視点—金融と介護の本質を考える」
金融の世界では、「投資(Investment)」は未来に向けて価値を高める行為として位置づけられている。資金を企業やプロジェクトに投じることで、新たな価値が生まれ、社会がより豊かになる。そのため、投資には明確なビジョンと目的が求められる。
介護もまた、社会に対する「未来への投資」と言える。なぜなら、介護は単なる日々のケアを提供するだけでなく、人生の質を向上させることを目的としているからだ。一人ひとりの幸福や健康を「長期的に支えること」こそが、介護が持つ本来の価値だろう。
投資とは価値観を示すもの
投資をする際には、「何に対して、なぜ投資するのか」という判断基準が問われる。金融業界に長く身を置いていた私は、投資家が自らの価値観を表現するために投資を行っているのを何度も目にしてきた。
介護の世界でも同様だ。介護事業者やスタッフがどのようなケアを提供するかによって、その組織の価値観や哲学が見える。イギリスでは、「Dignity(尊厳)」を非常に重視したケアが行われているが、これは単に「サービス」を超えた、人間の尊厳という価値への投資なのだ。
短期ではなく、長期で考える
金融投資には「短期的な収益を狙う」投資もあるが、最も大切なのは長期的な価値創造だ。企業の成長や社会の発展には、長い時間をかけて資金を投入し続ける「忍耐力」と「先見性」が欠かせない。
介護においても、目先の問題を解決するだけではなく、数年後、数十年後の高齢化社会に向けた準備や環境整備に取り組むことが重要だ。目の前の課題だけでなく、将来的な視点での介護サービスの充実や、人材育成にも長期的な投資が必要である。
リターンは金銭だけではない
金融の世界ではリターンを利益や資産価値の増加で測ることが一般的だ。しかし、介護におけるリターンは「感動」「感激」「感謝」などの人の心に響くものだろう。ケアを受ける方の笑顔や、ご家族からの感謝の言葉こそが、私たちが得るべき最大のリターンだ。
人は、感動と感激が行動を変える。そしてその行動が、新しい価値を生み出し、介護の未来を創っていく。
2025年、介護における「投資」を再定義する
介護という分野において、「投資」と言う言葉を使うことに違和感を持つ人もいるかもしれない。しかし、介護が社会の未来や人の幸福に向けた「価値の創造」である以上、これは間違いなく「投資」と言えるだろう。
金融と介護、その共通点である「未来への価値創造」をテーマに、私たちはこれからの介護をより良い方向へ導くための視点を探し続けよう。
株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造