社長ノート

Kameemon Leader’s Note 2025年12月号

「振り返りと展望—金融と介護の接点から見えた未来」

2025年も終わりに近づき、一年を振り返る時期になった。今年は「金融と介護の共通点」というテーマを軸に、リスク管理、投資、長期的な視点、ポートフォリオ戦略といった金融の考え方を介護の世界に応用できる可能性を探ってきた。

介護は単なる「支援」ではなく、一種の「投資」でもある。未来の安心のために、今どのような準備をすべきか。どのような支援が利用者の「資産=生活の質」を高めるのか。これらの問いに向き合いながら、介護の未来を考え続けた一年だった。

「価値の最大化」—介護と金融の本質的な共通点

金融では、資産を運用し、最大限の価値を引き出すことが重要な課題となる。介護もまた、利用者一人ひとりの能力を引き出し、生活の質を最大化することが求められる。

イギリスの介護では、「ストレングス・ベースド・アプローチ(Strengths-Based Approach)」という考え方が重視されている。これは、利用者の弱みやできないことではなく、強みや可能性に焦点を当て、それを生かした支援を行うというものだ。金融の世界で言えば、「資産のポートフォリオを見直し、持ち味を活かす運用をする」ことに似ている。

利用者にとって「できること」を伸ばし、「できないこと」を無理に補うのではなく、最適なバランスを見つける。これは介護の現場において、より主体的なケアを実現するための重要なアプローチである。

「持続可能な未来」—長期的な視点の必要性

金融の世界では、短期的な利益を追求することも重要だが、最も成功するのは「長期的な視点を持った投資」だ。同じことが介護の世界にも当てはまる。

持続可能な介護を実現するためには、単に人手を増やすのではなく、効率的なシステムを構築し、テクノロジーを活用しながら、より少ないリソースで質の高いサービスを提供することが求められる。AIやロボット、遠隔医療といった技術革新が、介護の未来にどのような影響を与えるのか、今後も注目していきたい。

また、介護業界の担い手が増えるためには、職業としての魅力を高める必要がある。金融の世界では、「人的資本(Human Capital)」という概念がある。これは、企業の成長には従業員のスキルや経験が不可欠であり、教育や研修を通じて価値を高めることが重要だという考え方だ。介護の世界でも、働く人々の専門性を高め、キャリアパスを明確にすることが、業界全体の発展につながるだろう。

「来年のテーマは何にすべきか?」

2025年を通じて、金融の視点から介護を考えることの意義を改めて感じた。この試みを通じて、多くの読者の方々と意見を交わし、新たな視点を得ることができたのは大きな収穫だった。

さて、2026年はどんなテーマを軸に考えていくべきだろうか? 介護の未来をどのように捉えるか、どのような課題に向き合うべきか。皆さんの意見をぜひ聞かせてほしい。

2026年も、より良い未来を目指して、新たな視点を探し続けたい。

株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造