社長ノート
Kameemon Leader’s Note 2025年11月号
「リスクとリターンのバランス—金融と介護の共通点を探る」
金融の世界では、投資にはリスクとリターンが表裏一体の関係にあると考えられている。高いリターンを狙うには、それ相応のリスクを受け入れなければならないし、安全を求めすぎると成長の機会を逃す。
実は、介護の世界もこの「リスクとリターンのバランス」が非常に重要だと感じている。介護とは、利用者が安心して生活できるよう支援する仕事でありながら、常に「どこまで支援すべきか」という判断が求められる分野でもある。過剰な支援は自立の機会を奪い、不十分な支援は生活の質を損なうことにもつながる。金融と同様に、適切なバランスを見極めることが、介護の質を高めるカギになるのではないだろうか。
リスクを恐れず、成長へ投資する
金融では、一定のリスクを受け入れながら、成長が見込める投資を行うことが成功の秘訣とされる。同じように、介護の現場でも「失敗を恐れず挑戦する姿勢」が必要だ。
例えば、イギリスの介護では「リスクを受け入れるケア(Risk-Enabling Care)」という考え方がある。これは、「利用者の安全を確保しつつも、本人が望む選択肢を尊重し、適度なリスクを許容する」アプローチだ。安全第一であることは大前提だが、過剰な管理は本人の自由や幸福を奪いかねない。本人が自分で決定できる範囲を広げることで、より充実した人生を送ることができるのだ。
介護におけるリスク管理の視点
金融の世界では、リスクを管理するためにポートフォリオ戦略が用いられる。投資を分散することで、特定の資産の価値が下落しても全体のバランスを保つことができる。
介護の現場でも、利用者一人ひとりの状況に応じた「分散型アプローチ」が求められる。すべての人に同じ支援を提供するのではなく、個々のニーズに合わせてカスタマイズすることが重要だ。たとえば、ある利用者には「見守ること」が最適な支援であり、別の利用者には「積極的な介入」が必要になる。このように、それぞれの状況に応じたリスク管理が、介護の質を向上させるポイントになる。
介護は「安心への投資」
金融では、投資家が将来のリターンを期待して資金を投入するように、介護もまた「未来の安心」に向けた投資であると考えられる。介護に携わる人々は、日々のケアを通じて、利用者とその家族に「安心」というリターンを提供しているのだ。
また、介護業界全体としても、持続可能なシステムを構築するための投資が求められている。高齢化が進む日本社会において、今のうちから介護人材の育成やテクノロジーの導入に投資を行うことは、将来的に大きなリターンを生むだろう。
未来の介護を考えるために
介護の現場では、「リスクを恐れず、新しい挑戦をすること」が求められている。金融と同じく、介護にも「適切なリスク管理」「長期的な投資」「柔軟な対応力」が不可欠だ。
リスクを完全になくすことはできない。しかし、そのリスクを適切に管理しながら、利用者一人ひとりがより良い生活を送るための環境を整えることが、介護における最大の「リターン」につながる。私たちは今後も、金融と介護の共通点を見つめながら、より良い未来のための介護を模索していきたい。
株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造


