社長ノート
Kameemon Leader’s Note 2025年2月号
「介護の本質—“選択肢を広げる”ということ」
この「Leader’s Note」を書くことになった理由はシンプルだ。私は今、介護業界に身を置き、その未来について考えている。そして、長年金融の世界にいた人間だからこそ見える視点があると感じたからだ。
2025年、私は「金融と介護の共通点」をテーマに、このノートを通じて考えを発信していくことにした。一見、全く異なる領域に見えるが、実はどちらも「信頼」「持続可能性」「選択肢の提供」を根幹とする仕事である。介護は、単に人を支える仕事ではなく、その人がより良い人生を選び取るための手助けをするもの。その視点を持つことが、介護の未来をより豊かにするのではないか。
“選択肢を広げる”介護とは何か
金融の世界では、「分散投資」という考え方がある。リスクを減らし、安定した成長を目指すためには、一つの選択肢に依存せず、多様な手段を持つことが重要とされる。これは、介護にも当てはまるのではないだろうか。
介護を必要とする人にとって、「選択肢がある」ということは大きな意味を持つ。たとえば、日本では高齢者が介護を受ける際、「施設に入るか、在宅介護か」という二者択一に迫られることが多い。しかし、イギリスでは「エクストラケア・ハウジング」と呼ばれる中間的な選択肢が存在する。これは、自立した生活を送りながら、必要なときにケアを受けられる仕組みで、利用者の自由を最大限に尊重するものだ。
また、イギリスの介護では、「ソーシャル・プリスクリプション(社会的処方)」という概念が根付いている。これは、薬を処方する代わりに、地域の活動やコミュニティへの参加を促すもの。人とのつながりが精神的な健康を維持し、結果として身体の健康にもつながるという考え方に基づいている。このように、介護は「支援」だけではなく、「その人の人生の可能性を広げるもの」として機能すべきではないだろうか。
介護と金融に共通する視点
金融と介護の共通点の一つは、「未来のために今できることを考える」という視点だ。
投資においては、「目先の利益を追うのではなく、長期的な視点を持つこと」が重要とされる。介護もまた、「目の前のケア」だけではなく、「その人が5年後、10年後にどんな生活を送りたいのか?」という視点を持つべきだ。
例えば、歩行が困難になった利用者に対して、すぐに車椅子を提供するのではなく、リハビリを取り入れ、少しでも自分で歩ける環境を作ることが、その人の未来の選択肢を広げることにつながる。介護は、単なる「今の生活を維持するもの」ではなく、「未来をより良くするためのもの」として考えるべきだ。
2025年、介護の未来を広げるために
介護は「人の可能性を引き出す仕事」であり、「その人が選びたい未来を支援する仕事」だ。
人は、感動と感激が行動を変える。そして、その行動が、新たな介護の形を生み出し、未来へとつながっていく。
2025年、私たちは「選択肢を広げる介護」を目指そう。一人ひとりが自分の生き方を選び続けられる社会こそが、真に豊かな介護の未来なのだから。
株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造