社長ノート
Kameemon Leader’s Note 2025年4月号
「リスクとリターン—金融と介護に共通する“最適なバランス”とは?」
介護と金融には、一見すると大きな違いがあるように思える。しかし、両者には本質的な共通点が多い。今年の「Leader’s Note」では、その共通点を探りながら、介護の未来について考えている。
4月号では、「リスクとリターンのバランス」について取り上げたい。金融の世界では、リスクを適切に管理しながら利益を追求することが重要だが、これは介護にも当てはまる。短期的な効率を重視するあまり、利用者の尊厳や生活の質(QOL)が損なわれることがあってはならない。介護においても、どのように「リスクを管理し、最適なバランスを見つけるか」が鍵となる。
リスクを取りすぎても、取らなすぎてもいけない
金融では、「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」といった考え方がある。大きな利益を得るためには、それ相応のリスクを取る必要があるが、一方でリスクを極端に抑えすぎると、十分なリターンを得ることはできない。
これは介護においても同じことが言える。たとえば、転倒のリスクを恐れて、利用者を常にベッドに寝かせておくことは、短期的には安全策かもしれない。しかし、それでは筋力が低下し、結果的に身体機能の低下を招くリスクが高まる。逆に、本人の希望を優先しすぎて無理な運動を促せば、怪我のリスクが増える。このように、リスクを極端に回避することも、逆に取りすぎることも、持続可能な介護のためには適切ではない。
イギリスでは、「リスク・イネーブルメント(Risk Enablement)」という考え方がある。これは、利用者ができる限り自立した生活を続けられるよう、適度なリスクを許容しながら支援を行うというアプローチだ。日本の介護現場でも、「安全第一」を守りながら、利用者が自分らしい生活を続けるために、どの程度のリスクを受け入れるべきかを慎重に考えることが求められている。
ポートフォリオ戦略と介護の多様性
金融の世界では、リスクを分散するために「ポートフォリオ戦略」が用いられる。一つの資産に依存せず、複数の資産を組み合わせることで、全体としての安定性を高める手法だ。
介護においても、特定の支援方法に依存するのではなく、多様な選択肢を持つことが重要だ。日本では「在宅介護」か「施設介護」かという二者択一になりがちだが、イギリスでは「エクストラケア・ハウジング」や「コミュニティケア」など、より多様な選択肢が整備されている。利用者がその時々の状況に応じて最適な介護を選択できる仕組みを整えることが、持続可能な介護の実現につながる。
2025年、介護における“最適なバランス”を考える
介護の現場では、リスクとリターンのバランスをどう取るかが常に問われている。利用者の安全を確保しながら、自立を支援し、人生の選択肢を広げるために、私たちは何をすべきか。
人は、感動と感激が行動を変える。そして、その行動が、介護の未来を創る原動力となる。
2025年、私たちは「介護の最適なバランス」を考えながら、リスクとリターンの適切な調整を模索し、より持続可能な介護の形を追求していきたい。
株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造