社長ノート
Kameemon Leader’s Note 2025年7月号
「時間の価値—金融と介護に共通する“時間の使い方”」
金融の世界では、「時間は資産である」と考えられている。投資のリターンは時間の経過とともに増加することが期待され、長期的な視点を持つことで資産を着実に成長させることができる。
これは、介護においてもまったく同じことが言える。時間は、単なる「経過するもの」ではなく、「どのように使うかによって価値が変わるもの」なのだ。介護の現場では、利用者にどれだけ質の高い時間を提供できるかが、その人の人生の充実度を決める。
短期的な効率化か、長期的な質の向上か
金融の世界では、「短期的な利益を求めるか、長期的な成長を重視するか」という議論が常にある。市場の動きに一喜一憂し、短期的な利益を追求するのも一つの方法だが、本当に価値を生み出すのは、時間を味方につけた長期的な投資だ。
介護でも、「短期的な効率化」と「長期的な質の向上」のバランスが重要になる。たとえば、介護スタッフの業務を最適化し、短時間で多くの利用者に対応できる体制を整えることは、コスト削減につながる。しかし、その過程で「人と人との関わり」が削られてしまうと、利用者の満足度が下がり、結果的に介護の本質が失われる可能性がある。
イギリスでは、「タイム・ウェル・スペント(Time Well Spent)」という考え方がある。これは、「時間は単に消費するものではなく、どのように過ごすかが最も重要である」という価値観だ。日本の介護現場においても、「効率化」だけでなく、「利用者にとって本当に価値のある時間とは何か?」を問い直すことが必要だろう。
時間を“投資”として捉える
金融の世界では、「時間をかけること」がリターンを生む要素とされる。たとえば、短期間で成果を出すのが難しいプロジェクトでも、粘り強く投資を続けることで、大きな成長につながるケースは多い。
介護においても、利用者に対して「時間を投資する」という考え方が重要になる。たとえば、認知症の利用者に対して、日々の会話や関わりを増やすことで、不安を軽減し、症状の進行を遅らせることができる。また、リハビリにおいても、短期間で劇的な成果を求めるのではなく、時間をかけて少しずつ機能回復を目指すことが、最終的には大きな効果を生む。
このように、介護の現場では、「どこに時間を投資するか」を意識することで、利用者の生活の質を高めることができる。短期的な成果だけでなく、長期的な視点を持つことが、より良い介護を実現する鍵になる。
2025年、介護における“時間の価値”を考える
介護は、「時間の使い方」がその質を決める仕事だ。どのように利用者と関わるか、どこに時間を投資するか——この問いに真剣に向き合うことで、介護の未来はより良いものになっていく。
人は、感動と感激が行動を変える。そして、その行動が、介護の未来を創る原動力となる。
2025年、私たちは「時間の価値」を見直し、介護における本質的な時間の使い方について考える年にしたい。金融の視点から介護を見つめ直すことで、新たな可能性が見えてくるはずだ。
株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造