社長ノート

Kameemon Leader’s Note 2025年9月号

「信用と信頼—金融と介護に共通する本質」

 金融の世界では、「信用(Credit)」がすべての基盤となる。銀行が融資を行う際、個人や企業の信用力を評価し、それに基づいて資金を提供する。信用がなければ、資金調達は難しくなり、経済活動は停滞する。

 同じように、介護の世界でも「信頼」が最も重要な基盤となる。利用者やその家族は、介護スタッフを信頼して日々の生活を預ける。もし信頼が失われれば、介護サービスの質や継続性に大きな影響を及ぼすことになる。

信用は数値化できるが、信頼は築くもの

 金融の信用は、数値化できる。たとえば、個人や企業の信用スコアを見れば、その人や企業の経済的な信頼度を測ることができる。しかし、介護における「信頼」は、単なる数値では測れない。

 イギリスでは、「Person-Centered Care(個別化ケア)」という考え方が根付いている。これは、「利用者一人ひとりの価値観や生活スタイルを尊重し、それに基づいたケアを提供する」というものだ。信頼を築くためには、利用者と向き合い、日々の関わりを通じて信頼関係を構築していくことが求められる。

長期的な信頼を築くために

 金融において、信用を築くには長い時間がかかるが、失うのは一瞬だ。企業が誤った経営判断をすれば、投資家の信頼を失い、株価は暴落する。同じように、介護の現場でも、一度の対応ミスが利用者や家族の信頼を損ねることがある。

 では、どうすれば長期的な信頼を築けるのか? それには、「一貫性」と「透明性」が重要だ。たとえば、介護スタッフがどんな利用者にも変わらぬ誠実な対応をし、常に利用者の視点で考え続けることで、「この人なら大丈夫だ」と感じてもらえる。また、介護サービスの内容や方針を家族としっかり共有し、オープンな関係を築くことで、安心感が生まれる。

信頼を積み上げる介護の未来へ

 介護は、金融のように短期間で成果を数値化できるものではない。しかし、「信頼」という目に見えない資産を積み上げることで、より良い介護が実現できる。

 人は、感動と感激が行動を変える。そして、その行動が、介護の未来を創る原動力となる。

 2025年、私たちは「信頼を築く」という視点を大切にしながら、介護の本質を見つめ直す年にしたい。金融と介護、それぞれの分野で培われた「信頼の哲学」を活かし、より良いケアを提供するためのヒントを見つけていこう。

株式会社亀右衛門 代表取締役社長 福嶋 俊造